The Da Vinci Art Project vol.05
Nepal Art Exploration Report
南アジア アート視察レポート
― 曼荼羅・宇宙・人類の起源への回帰と統合 ―
ザ・ダ・ヴィンチ・アート・プロジェクトの一環として、私は仏教とヒンドゥー教が混交する祈りの大地、ネパールへ8日間の視察を行った。
今回の旅の主目的は、当プロジェクトの核心的テーマである「人類・宇宙・曼荼羅」の根源を探ることにある。
中世の面影を残すカトマンズの都市構造、聖地で描かれる曼荼羅(タンカ)の制作プロセス、そしてヒマラヤ山脈という地球規模の造形美を、医学・神経科学・芸術の統合的視座から観察・分析した。
これは、レオナルド・ダ・ヴィンチが自然の中に普遍的な法則を見出したように、東洋の叡智である曼荼羅とヒマラヤの自然律を、21世紀のアートとして再解釈するための実地探究である。
混沌(カオス)と生命エネルギーの受容 ヒマラヤの麓、カトマンズ盆地に降り立つと、そこは色彩と騒音が支配する「カオス」の空間であった。
狭い路地に人と車、リキシャがひしめくタメル地区は、一見無秩序に見えるが、神経科学的には過剰な視聴覚刺激が脳のRAS(網様体賦活系)を強く刺激し、人間の原始的な生命力を覚醒させる装置として機能している。
ダ・ヴィンチが市場の雑踏の中で人間の表情を観察しスケッチに残したように、この混沌こそが「人類」のエネルギーの源泉であることを確認した。
この都市の振動(Vibration)は、私が制作するアートの動的なテクスチャに新たなインスピレーションを与えるものである。
ヒマラヤ山脈の大自然に空中から触れる。曼荼羅に見る「宇宙の縮図」と神経美学。
幸運にもヒマラヤ山脈へ遊覧飛行機で立つことができ、機内からエベレストを含むヒマラヤ山脈を観察。
チベット仏教の聖地ボダナートを訪問。
高さ36mの巨大な仏塔は、それ自体が立体的な曼荼羅(マンダラ)であり、地・水・火・風・空の五大エネルギーを象徴している。
この幾何学的構造は、私がテーマとする「宇宙とマンダラ」の具現化そのものである。
現地のタンカ(仏教画)工房にて、極細の筆で曼荼羅が描かれる制作風景を見学した。
絵師の呼吸と筆致が完全に同調(シンクロ)する様子は、深い瞑想状態における脳波(α波〜θ波)の現れであり、「制作行為そのものが祈りであり、癒やしである」という事実を確認した。
ここで目にした実物の曼荼羅の色彩配置とフラクタル構造は、視覚刺激として視床下部に作用し、自律神経のバランスを整える効果を持つと考えられる。
この知見は、私の「3Dレジンリタッチ法」による新作曼荼羅アートへ直接的に応用可能である。
写真:機内から観るヒマラヤ山脈
写真:曼荼羅を制作販売する店「ブッダの智慧の眼」と都市の精神性 小高い丘に建つスワヤンブナートからは、カトマンズ盆地を一望できる。
仏塔の四方には「ブッダの智慧の眼」が描かれ、全てを見通す意識の象徴となっている。
この「眼」の図像は、視覚芸術における**「メタ認知(高次な気づき)」**を促す強力なアイコンである。
ダルバール広場では、生き神クマリが住む館を訪問。木彫装飾で埋め尽くされたネワール建築は、過度な装飾美(バロック的)でありながら、数学的な対称性を保持している。
歴史と信仰が都市機能と不可分に融合している様子は、ダ・ヴィンチが理想とした「機能と美の調和」の東洋的解釈であると分析した。
写真:世界最大級の仏塔 ボダナート・ストゥーパ(Boudhanath Stupa)
写真:ネパール最大級 五重塔 ニャタポラ寺院(Nyatapola Temple)
写真:バクタプルの街並 自然の造形美と「地球」の実感 カトマンズから空路でポカラへ移動。機窓から望むヒマラヤ山脈の威容は、まさに「地球の創造物」の極致である。
ポカラは標高800mの亜熱帯気候にあり、アンナプルナ連峰を湖面に映すフェワ湖が広がる。
カトマンズの喧騒とは対照的な静寂(Silence)は、交感神経優位の状態から副交感神経優位へのスイッチングを促す。
湖畔の散策において、水面(水平線)と山脈(垂直線)が織りなす構図は、空間デザイン神経科学(Neuroarchitecture)の観点から、心理的安定をもたらす黄金比的な均衡を保っていることを体感した。
写真:芸術の都パタン クリシュナ寺院
写真:カトマンズの渓谷で曼荼羅制作宇宙観の深化と光のスペクトル 早朝、サランコットの丘にてヒマラヤからの日の出を視察。
太陽光が8,000m級の峰々を黄金色に染め上げる光学的現象は、地球の自転という宇宙的リズムを視覚化する瞬間である。
この「光」こそが、ダ・ヴィンチが『絵画論』で追求した色彩の源であり、私のレーザーアートの原点でもある。
自然が作り出した大地の裂け目であるデヴィズ・フォールや洞窟を探求し、自然界の流体力学的なフォルムを観察。
これら自然の造形は、人体の血管網や神経網の分岐構造と類似しており(バイオミミクリー)、**「人体は小宇宙(ミクロコスモス)であり、宇宙(マクロコスモス)の反映である」**というダ・ヴィンチの命題を再確認するに至った。
写真:ポカラで日の出を指で摘む。
写真:世界平和パゴダ(シャンティ・ストゥーパ)
生と死の境界、エントロピーの法則 カトマンズへ戻り、ネパール最大のヒンドゥー教寺院パシュパティナートを視察。
ここでは聖なる川のほとりで公開火葬が行われている。
遺体が炎となり、灰となって川へ還る光景は、物質がエネルギーへと変換される物理学的プロセスであると同時に、生命の輪廻転生を可視化する儀式である。
「破壊の神シヴァ」が司るこの場所で、死は忌避すべきものではなく、生命循環の一部として受容されている。
医学者として多くの命に向き合ってきた私にとって、この光景は「人類」というテーマを深めるための根源的な体験となった。
エントロピーが増大し、また新たな秩序(生命)へと再生するシステムは、次世代アートにおける「再生」のメッセージに直結する。
写真:パシュパティナート寺院(Pashupatinath)の 火葬場
写真:リシュナ・マンディール
ダルバール広場では、生き神クマリが住む館を訪問。
幸運にもクマリの姿を拝観できた。まだ3歳に満たない幼女であった。
ネパールの独特な文化は人間の生に大きな影響を与えうることを深く認識できた。
木彫装飾で埋め尽くされたネワール建築は、過度な装飾美(バロック的)でありながら、数学的な対称性を保持している。
歴史と信仰が都市機能と不可分に融合している様子は、ダ・ヴィンチが理想とした「機能と美の調和」の東洋的解釈であると分析した。
写真:カトマンズ・ダルバール広場にて
写真:シヴァ神の忿怒形「カラ・バイラヴ」
写真:ネパール古代彫刻、観音菩薩(観世音菩薩)
写真:チベット医学の人体図、医学タンカ(Medical Thangka)
統合知(Total Knowledge)への昇華
8日間の視察を終え、帰国の途へ。
ネパールという地は、極彩色の曼荼羅(芸術)、精緻な建築構造(科学・数学)、そしてヒマラヤの大自然(宇宙)が渾然一体となった、まさに「The Davinci Art Project」が目指す統合的な世界であった。
聖地で触れた祈りの波動、ヒマラヤで感じた宇宙の静寂、そして人々の営みに宿る生命力。
これらの体験から得たインスピレーションは、神経美学的なアプローチによって、視る者の迷走神経を刺激し、魂を揺さぶる新たなアート作品として昇華されるだろう。
本視察は、レオナルド・ダ・ヴィンチの精神を現代に蘇らせるための、不可欠なフィールドワークであったと確信する。
